サイト売買、サイトM&Aにおけるリスクとは
サイト売買にはリスクがつきものです。サイトの価値はインターネット業界やサイト売買市場の状況によって変わりやすく、将来性を見極めるのも困難であるため、売り手側と買い手側、両者ともに望んでいたような結果を得られるとは限りません。
また、サイト売買業界がビジネスとして成立し始めたのは最近のことで、まだまだ発展途上であり、サイト売買に関する法律もなければ、これといった定石もありません。なにかトラブルが起きたら、臨機応変に対応する必要があります。
リスクを回避するためには、まず、サイト売買においてどのようなリスクが想定されるのかを知っておくべきです。この記事では、売り手側、買い手側に分けて、サイト売買におけるリスクについてまとめました。サイト売買を考えている方は、ぜひご一読ください。
売り手側のリスク
①サイトの情報だけ取られてしまう
サイトを売却するために、交渉段階で過去のPV/UUやCVR、売上といったパフォーマンス、具体的な運営方法などを買い手側に提供することはよくあることです。
サイトの価値を正しく伝えるために必要なことですし、本来、このような詳細情報を共有する段階までいけば、交渉はほぼ成立しているはずです。
しかしながら、買い手のなかには最初からサイトを買収する気がなく、サイトに関する情報を手に入れるためだけにコンタクトを取ってくる人もいます。
こういった「冷やかし」は多く、サイト売買サイトに掲載されている案件にはよく「冷やかしはお断りします」といった文言が書かれています。
交渉中、相手に少しでも不信感を持ったら第三者に相談するか、取引を中止にしたほうが良いでしょう。
②代金が支払われない
交渉が成立し、サイトを売却したのに代金がいつまで経っても支払われない、というトラブルも残念ながら多いです。
入金遅延が発生するだけでなく、サイトを譲渡した途端に連絡が一切取れなくなってしまった、というケースもあるようです。
支払いに関するリスクは、「エスクローサービス」を利用できる仲介業者を選ぶことで回避できます。
③契約書が買い手側に有利だった
先述した通り、現段階ではサイト売買に関する法律は存在しません。そのため、「秘密保持契約書」や「譲渡契約書」など、各種契約書の内容が非常に大切になるのですが、買い手側のリスクヘッジのために、極端に買い手側に有利な契約書になってしまうことがあります。
できるだけ早くサイトを売却しようと焦ったり、交渉が決裂してしまうことを恐れてしまい、不平等な契約書を締結してしまう売り手も少なくないようです。
契約書を締結する際には、必ず専門家のチェックやアドバイスを受けるようにしましょう。
④アフターケアに想定外のリソースがかかった
譲渡するサイトによっては、アフターケアが必要になるものもあると思います。かと言って、過剰なアフターケアは売り手側を苦しめることになります。
新事業の立ち上げ、事業と人員の整理、資金の確保など、サイトを譲渡する理由は様々ですが、譲渡後もサイトに手間がかかっていては元も子もありません。アフターケアは必要最低限に抑えましょう。
買い手側のリスク
①サイトが譲渡されない
代金を支払ったのに、肝心のサイトが譲渡されないまま売り手側と音信不通になってしまい、いつの間にかサイトも削除されていた、というのは、買い手側が最も遭いやすい被害です。
売り手側と同じく、取引相手がよほど信頼できる場合じゃない限り、「エスクローサービス」を利用できる仲介業者を選ぶようにしましょう。
②サイトの実態が事前の説明と異なっていた
基本的に、サイト売買においてはプラスの面、マイナスの面に関わらず、売り手側は買い手側にサイトの情報を正直に伝えなければなりません。
しかし、売上やアクセス数の粉飾、Googleからペナルティを受けたことがある事実を隠しているなど、嘘や誇張を平然と行う売り手も少なからずいます。なかには、ASPを利用して制作したサイトを、独自で制作したものだと偽って売ろうとする悪徳なケースもあります。
サイトの実態を証明する資料はできるだけ多く提出してもらうようにしてください。また、サイトを検証、検収する期間も必ず設けましょう。
③買収したサイトと同じジャンルのサイトを売り手が立ち上げた
サイトを買収した後、売り手が同じジャンルの別のサイト、つまりライバルとなりうるサイトを運営しているのを発見するケースが稀にあります。
売り手側は既にじゅうぶんなノウハウを持っており、新しく制作したサイトは売却したサイトよりも優れている可能性が高いですから、これは避けたい事態です。
売り手側と契約書を締結する際には、必ず「競業避止義務」について定めましょう。そうしないと、せっかく買収したサイトを他でもない売り手側に潰されてしまうかもしれません。
④サイトのコンテンツがコピーだった
コピーコンテンツとは、その名の通り、他のサイトが提供している内容と全く同じ、またはよく似通っているコンテンツのことです。
コピーコンテンツは、Googleが悪質だと判断した場合、ペナルティを受ける対象になります。説明文に「全て独自のコンテンツです」と書かれている場合でも、必ず自分自身でコピペチェックをしてください。
⑤ブラックハットSEOが行われていた
ブラックハットSEOとは、Googleがサイト運営者に向けて設けているガイドラインに準拠していない、不正なSEOのことです。
ブラックハットSEOが行わているサイトは、一時的には検索順位が上位を保っていても、コアアルゴリズムのアップデートやなにかしらの影響で順位が急落したり、インデックスが削除される危険性があります。
そのようなサイトを買収してしまわないように、どのようなSEOを行っているのかを必ず確認しましょう。SEOに自信がない場合は、専門的な知識を持つ第三者に確認をお願いするのもひとつの手です。
ただし、コアアルゴリズムのアップデートによって、ホワイトハットとされていたSEOがブラックハットに転じることもよくあります。このようなケースは予測が難しいので、不測の事態に対応できるように知識を蓄えておきましょう。
⑥アフターケアをしてもらえなかった
特にサイト運営初心者の場合、アフターケアの有無は気になるところだと思います。売り手側は、当然のことながらできるだけ手間をかけずにサイトを売却したいと思っていますから、アフターケアを一切しないと明言しているケースも少なくありません。
あるいは、取引を早く終えるために、アフターケアをすると口だけで約束し、実際にはなにもしないというケースもあります。
アフターケアをしてもらえるかどうかは、交渉段階でその具体的な内容も併せて確認し、取り決めた内容を必ず契約書に記載するようにしましょう。
リスクを回避するために
信頼できる仲介業者を使おう
この記事で取り上げたリスクの数々は、決して珍しいものではなく、むしろ頻発しているものです。特に個人間での売買では、お互いの良心しか頼れるものがないので、よほど信頼のできる相手でない限り、安全かつ公平な取引は難しいと言えます。
そこで推奨したいのが、サイト売買仲介業者の利用です。サイト売買業界が盛り上がると共に、サイト売買仲介業者もまた増えてきています。
仲介業者が掲載、あるいは紹介する案件は、サイト売買に関する知識と経験を持った第三者がチェックしていますので、信頼のできる案件ばかりです。それは契約書の締結に関しても同じことが言えます。
サイトの査定も無料で行ってくれる仲介業者がほとんどなので、適正価格での売買を実現することも可能です。
また、「エスクローサービス」と呼ばれる、買い手側からサイトの代金を一時的に預かり、無事にサイトの譲渡が完了してから売り手側に支払う、というサービスを利用できる仲介業者もあります。「エスクローサービス」を利用すれば、支払いに関するトラブルを回避することができます。
検証、検収期間に関しても、仲介業者が必ず設けるように指示してくれますし、内容によってはサポートをしてもらえることもあります。
ただし、売れ残っているサイトを強引に売ろうとしてきたり、仲介手数料を取るだけ取って特になにもしてくれない詐欺まがいの仲介業者もあります。
仲介業者を選ぶ際には表面上のデータを鵜呑みにするのではなく、どのような案件が掲載されているのかをチェックしたり、どのような仲介サービスを行ってくれるのかを実際に問い合わせたりしましょう。